指導か、それともパワハラか!?剣道界が向かうべき課題(後編)

社会人向け

皆さん、こんにちは!!

剣道ジャーナル編集長の酒田マードックです。

ゴールデンウィークも終了し、日常生活に戻っている方も多いかと思います。ゆっくり休息できた方、イベント等で忙しかった方それぞれあるかと思います。

さて、前回の記事【指導か、それともパワハラか!?剣道界が向かうべき課題(前編)】では剣道指導におけるパワハラについて定義し、指導と暴力の違いについて解説いたしました。まだ、お読みでない方はこちらの記事を先に読んでいていただけると今回の話がわかりやすいかな、と思います。

今回は、報道で出ている情報をもとではありますが、足立区の事件について解説した上、向かうべき課題について整理・解説したいと思います。

足立区の事件の概要

前回の記事でざっくりとした情報のみ記載しておりますが、今回は事実関係を少し深掘りして解説したいと思います。

【事件概要】
⚫︎今年1月、東京都足立区の剣道教室で小学1年生の女の子が練習中に53歳の元指導員の男から木刀で頭を叩かれ、脳震盪と打撲の怪我をした。
⚫︎元指導員は「腕が正しく上がっていないことを教えるためだったが、間違った指導だった」と供述している。
⚫︎女の子は吐き気と痙攣の症状が出ており長期経過観察が必要との診断。
⚫︎指導員は以前から子供達に罵声を浴びせていた

前回、稽古におけるパワハラについて私は次のとおり定義いたしました。
「①優越的な地位に基づいて、②稽古、指導の適正範囲を超えて③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は稽古環境を害すること」と定義いたしました。

その定義に基づいて今回の事件について考えてみたいと思います。

事件を受けた分析と考察

今回の事件について、考察していきたいと思います。

まずは、これらがパワハラに当たるかについて今一度考えてみましょう。

①優越的な地位に基づいて     
→ 指導員と生徒、大人と子供と優越的地位にあることは間違いない
②稽古、指導の適正範囲を超えて
→木刀で後頭部を殴る行為自体、一般的に指導の適正範囲を超えている
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は稽古環境を害すること
→吐き気等実際に身体への苦痛が発生している。

このことから本件についてはパワハラに当たると考えて良いと思います。

強くなるためにはもちろん厳しい稽古も必要です。また、竹刀で相手と叩き合う武道である以上、他の競技に比べて厳しい指導になるのも仕方がないと思います。

しかしながら、今回の件に関しては武道における指導の域を超えていると考えております。また、警察が傷害の疑いで書類送検していること、2年間の会員資格停止の処分などから生徒との関係性が「よかった」と言うことはできないと思って良いでしょう。

これから考えるべき課題

指導の変革期に入ってから、剣道界でも多くの指導者は意識を改め、暴力に頼らない指導法を模索してきました。これまで「気合い」「厳しさ」「根性」を重視していた時代から、現代では生徒一人ひとりの理解度や心のケアを重視する方向に舵を切りつつあります。

しかし、その中でも熱心さゆえに間違った方向に進んでしまう指導者が存在するのも事実です。

熱心さと暴力は紙一重、という言葉がありますが、本来、熱意は生徒を正しく導くための力であり、暴力に変わった瞬間、それはただの支配と恐怖の手段になります。

暴力による指導は一見、指導者にとっては「考えなくて済む」楽な道です。怒鳴る・叩く・罵倒することで強制的に従わせようとする方法は、短期的には相手が従うように見えても、実際には師弟関係を破壊し、信頼を失わせるだけです。

その結果、技術は育たず、むしろ恐怖による精神的ダメージを与えることになり、将来的に剣道から離れる子どもたちを生み出してしまいます。

今回の事件は、剣道界全体がこの「意識のギャップ」を改めて考えるべきタイミングを示しています。変革期を過ぎた今だからこそ、過去の名残として残っている悪しき指導習慣を完全に断ち切り、暴力ではなく信頼と対話に基づく指導を標準化していくことが重要です。

編集後記

前回話したとおり、本記事は今の時点での僕の考えとなります。僕自体古い考えを持っている人間かもしれません。

記載した内容自体、1年後には「全くもって常識はずれ」となっている可能性も否定できません。

刻一刻と変わる状況に応じた考え方ができなければ、指導ができなくなる未来が来るかもしれない、と考え行動していく能力が今後必要になってくるかと思います。


文・酒田マードック

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