指導か、それともパワハラか!?剣道界が向かうべき課題(前編)

社会人向け

こんにちは!!

剣道ジャーナル編集長の酒田マードックです。

令和7年5月、剣道界においてあるニュースが話題になっています。

ざっくりいうと「東京都足立区の剣道教室で指導員の男が指導中、教え子の小学生の頭を後ろから木刀で叩き怪我をさせた疑いで指導員の男が書類送検されて」というニュースです。

この事件の詳細については報道で得られる情報以外は分かりませんが「怪我をしている」という以上、適切な指導ではなかったではないかと推測しております。

剣道は竹刀を用いて相手を打突し合う競技であるため、競技の性質上、指導とパワハラ、暴力は常に背中合わせであります。

「一歩間違えば、すぐにパワハラや暴力になってしまう」と言っても過言ではありません。

しかしながら、パワハラを恐れて「過度に優しく指導するのが果たして正しいことなのか?」という課題もあります。

剣道指導における暴力、パワハラの定義

「一般財団法人全日本剣道連盟における倫理に関するガイドライン」を見てみると、以下の通り記載されています。

I. 反倫理的行為に起因する事項

1.身体的・精神的暴力(バイオレンス)行為等について

役職員、剣道指導者等は、以下の事項に留意しなければならない。ま
た、全剣連は、これらの者に対して、講習会・研修会を通じ、自己の役
割や責任等を指導徹底する。
(1) 組織の運営又は剣道を指導する際に意見の相違などが生じた場
合は、互いに話し合い、相手の人格を尊重して相互理解に努めるこ
と。特に指導的立場にある者は、選手、剣道を学ぶ者等への指導の
際、暴力、パワー・ハラスメント行為と受け取られるような行いに
は十分留意すること。
(2) 剣道を行う際又は指導する際に問題解決の手段として、暴力、パ
ワー・ハラスメント行為(直接的暴力、暴言、脅迫、威圧等)を行う
ことは、厳に禁ずる。

ざっくり解説すると(1)では「意見の相違が生じた場合はまず話し合ってお互いに理解しましょう。特に指導する際は、暴力やパワハラと受け取られないように注意しましょう」という意味。
(2)では「課題や問題解決のために暴力やパワハラ行為をしてはいけません」という意味。
この二つになるかなと思います。

まず、そもそも「パワハラとは何か?」そこから考える必要があるかと思います。ここで厚生労働省のHPよりパワーハラスメントについて学んでいこうと思います。〈参照:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000366276.pdf

これを見るとパワハラは「①優越的な地位に基づいて②業務の適正な範囲を超えて③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること」と定義されています。

これを剣道の道場に落とし込むと、「業務の適正」の部分が「稽古、指導の適正」に「就業環境が稽古環境」に変わってくるのかと推測されます。

指導と暴力(パワハラ)の違い

前の項目を実際の稽古における指導に落とし込んで見ようと思います。あくまでも酒田の見解ということでご承知おきください。

まずは、実際稽古の中での優越的な地位について考えたいと思います。一番想像しやすいのは「先生」「指導者」「高段者」と呼ばれる人たちではないでしょうか。しかしながらそれだけとは言えない場面もあります。段位は低いが年上、リバ剣だけど高校の先輩後輩の関係、仕事上のつながりがある等、本来は個別具体的に考える必要があると思います。

次に「稽古・指導の適正な範囲」について考えてみたいと思います。ここは本当に難しい部分であるし、時代によって変化するものだと思います。
今、現時点での僕個人としての考えとしては「何かの目的を果たす手段として必要最小限の指導」が適正な範囲なのかなと思います。
具体的には「言えばわかることを必要以上に怒鳴る」や「目的がないのに扱く」などかなと思います。

最後に「身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は稽古環境を害すること」について考えてみたいと思います。正直、強くなろうとすると「身体的、精神的な苦痛」は避けて通れない道であることは間違いないです。試合自体、精神的なプレッシャーが大きいのでそれに耐えうるだけの精神は稽古でしか身につきません。また身体的な強さを身につけるためには身体的な苦痛を伴う厳しくきつい稽古を乗り切る必要があると思います。
実際、稽古環境についてもめちゃくちゃ強い剣友会はピリピリした雰囲気の稽古を行っていることが多いです。

パート分けして考えてみましたが、「指導を受けるものが求めているレベル以上の厳しい稽古はパワハラに当たる可能性がある」のかなと思います。

実際そこのギャップを埋めるためには、「指導者側と教わる側でしっかりよく話し合うことが必要」だと感じています。

編集後記

正直、時代によって考え方が変わるので私自身の考え方が「時代遅れ」の可能性も十分あります。指導者同士、指導者と教わる側でしっかり指導について話し合わなければどんどん取り残されてしまいます。

何が本当に正しいのか今後も考えていきたいと思います。


文・酒田マードック

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